スタンド・バイ・ミーを観た夜、思い出した“あの子”のこと

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この前、金曜ロードショーで『スタンド・バイ・ミー』を久しぶりに観た。

名前と主題歌は昔から知ってたけど、実はちゃんと観たのは大人になってから。今回も、「懐かしいな」くらいの気持ちでテレビをつけたはずが、思いがけず心がじんわりと揺さぶられてしまった。


横で観ていた娘(つるこ)に「どんな映画?」と聞かれて、うまく説明ができなかった。


「死体を探す話かな?」「子どもが夏休みに冒険する話?」「うーん…」
大人になった主人公が、“昔の親友の訃報”をきっかけに、子どもの頃の思い出を語り始める――そのことだけは伝えられたけど、「何が面白いの?」と聞かれても、ちゃんと答えられない。


でも、その説明できなさこそが、この映画の良さなんじゃないかって思った、そんな夜でした。

つるぴよ

以下、映画のあらすじを除いてはただただ私の思い出語りで、映画のような出来事ではないのですみません。





目次

スタンド・バイ・ミーって、どんな映画?

「スタンド・バイ・ミー」は、1986年に公開されたアメリカの青春映画。
原作はスティーヴン・キングの短編小説『The Body(死体)』。ホラーじゃないキング作品としても知られています。


物語の舞台は1950年代の小さな町。
少年4人が「行方不明の死体を見つけるための冒険」に出かける、たった2日間の話です。


でも、ただの“死体探し”の冒険じゃない。
家族や学校では言えない悩みや不安、ちょっとした意地の張り合い、心の奥にある寂しさ――
そんなものを、友達と過ごす時間の中でぽろぽろとこぼしていくような、繊細な物語です。


大人になった主人公が、昔の友達の訃報をきっかけに、その夏を回想する形で話が進んでいくのですが、
観ている私たちもまるで、自分の子ども時代をそっと覗き込むような気持ちになります。


派手な事件も、大きな奇跡も起こらない。
それなのに、なぜか観終わると胸の奥に静かに余韻が残る――
そんな、不思議な映画なんです。

映画を観てちょっと思い出した、あの子との記憶

子ども時代の思い出って、派手な出来事があったわけじゃないのに、なんとなく忘れられない時間がある。
『スタンド・バイ・ミー』を観ていると、まるで昔の記憶を、静かに一枚ずつめくっていくような感覚になる。




私が思い出したのは、小学生の頃によく遊んでいた近所の子たちのこと。
今思えば、みんな本当にバラバラだった。
すごく頭のいい子もいれば、すぐキレる乱暴な子もいたし、特に気が合うわけでもない。
でも、「家が近いから」というただそれだけの理由で、毎日のように集まって、自然と一緒に遊んでいた。


中でも一番よく遊んでいたのは、歩いて1分くらいのところに住んでいた、同い年の女の子。
学校ではちょっと変わり者扱いされていた子だった。


周りの子からは「変わってる子」と言われていたけど、
小さい頃から一緒にいた私は、あまりそういうことを気にしたことがなかった。
ただ、いつも通りその子の家に遊びに行っては、一緒にゲームをしたり、
放置された工事現場で探検ごっこをしたりしていた。


すごく頭が良くて、感性も独特で、ちょっと不思議な子。
でも当時は、そんなことを深く考えることもなく、ただ一緒に過ごしていた。


大人になると、友達って「価値観が合うか」とか「話が合うか」みたいな基準で選ぶようになるけど、
子どもの頃はもっとずっとシンプルだった。


「家が近いから」
「なんとなく昔から一緒にいるから」


それだけで毎日のように遊べたし、そこには変な壁も、遠慮もなかった。

あの子はいま、どこで何をしている?

その子のこと、今はもう何も知らないんです。


高校くらいまでは「〇〇ちゃんは県内で一番の進学校に受かったらしいよ」なんて噂を耳にすることもあったけど、
中学受験の時にはすでにほとんど話さなくなっていて、
高校に入った頃には、あんなに近所に住んでいたのに、姿を見かけることさえなくなっていた。


それでも誰かに、「小さい頃、仲良かった子ってどんな子?」と聞かれたら、
私はきっと、その子のことを思い出すと思う。


進学校に進んだあと、親の反対を押し切って美術の道に進んだ――
そんな話を、ふと誰かから聞いたことがある。
私の地元では珍しいくらい教育熱心なご両親で、我が家とは違って、どこか厳しくて、
あの子が何かを押し殺しているような雰囲気を感じたこともあった。


だからこそ、東京に出て美術を学びに行ったと聞いたとき、
私はなんだか嬉しくなった。


今も、どこかで絵を描いているのかもしれない。
元気で、自分の好きなことを大切にして生きてくれていたら――それだけで十分だ。

たぶん、今再会しても、昔みたいに会話が弾むことはないかもしれない。
でも、いつかどこかで、お互いがそれぞれの場所で頑張っている姿が見られたら、
それはそれで、ちょっといいなって思う。

『スタンド・バイ・ミー』って、物語自体がすごく大きな事件を描いてるわけじゃないのに、観終わったあとに静かに胸がいっぱいになる映画だった。
きっとあの子との思い出と同じで、「何が面白いのか」はうまく説明できないけど、確かに心が動いたのを感じる。


子どもの頃の“なんでもなかった時間”が、こんなにも胸に残ってることに驚く。
そして、それを思い出させてくれる映画があることに、少し救われる。


たまには、誰かと“昔話”をするような気持ちで映画を観るのも、悪くないなって思った。

さいごに:またいつか、娘と一緒に観る日が来たら


「スタンド・バイ・ミーってどんな映画?」
つるこにそう聞かれたとき、私はうまく答えられなかった。
でも、それでよかったのかもしれない。


きっとこの映画は、何度も観たくなるような派手な作品じゃないし、子どもが観てすぐに「おもしろかった!」と言うような映画でもない。
でも、ふとしたときに思い出して、心に引っかかってくる。
自分の昔のことを、そっと引き寄せてくれる。


つるこがもう少し大きくなったとき、また一緒に観てみたい。
そのとき、私はまたうまく説明できないかもしれないけど、
つるこの中に何かが静かに残るなら、それでいいと思う。


あの夏の線路の向こうにあったものを、
いつか、彼女なりの形で感じてくれたら――それだけで、なんだか嬉しい。

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